慶集寺 新御堂(しんみどう)
木像御本尊 + 木彫作家・岩﨑努 作『 空華蓮水極楽浄土図 』
約三百年に渡って慶集寺で護持されてきた「木仏本尊」は、浄土真宗本願寺派の仏師であった京都・岡崎「渡邊康雲」による、日本浄土教の伝統的な様式が見られる仏像です。旧本堂の解体を機に古い荘厳からお出しして修復作業を施したことで、その美しいお姿の全体像を顕現されました。
そして新たに、この御本尊の背面を荘厳する木彫レリーフを、岩瀬大町に工房を構える岩﨑努氏に制作していただきました。岩﨑氏は、国内外での高い評価を得ている、当代屈指の木彫家です。樹齢約三百年の国産欅の木板7点に浮かし彫りを施し、それらを横並びに組み合わせることで、幅約2.8メートルの大作に仕上げられています。
御本尊と木彫荘厳が新御堂内陣の空間にあわせて安置されることで、蓮の花が咲き誇る極楽浄土に花びらが舞い散る光景と、阿弥陀仏が来迎されて引導を渡すお姿が、厳然と現れて見えます。
◉ 岩﨑氏にお尋ねしました
Q1:仏教(南無阿弥陀仏)をテーマとした作品の依頼に、まずはどう思われましたか?
私にその資格があるのか悩みましたが、ご覧いただいた方々が自然に手を合わせてくださる様な作品を目指そうと、気負わず考えられるようになり、謹んでお引き受けさせていただきました。
Q2:作品制作の過程で、どんなことを思い、感じられましたか?
御本尊とこのレリーフが重なり合った時の、見え方・バランスを絶えず想像しながら、彫り進めておりました。御本尊を常に意識できる幸せを感じておりました。
Q3:慶集寺を訪れる方々に、作品のどんなところを見てもらいたいですか?
繊細な彫りが印象的な御本尊と釣り合いが取れるよう制作した、大画面ながら密度の高い彫りと、舞い散る花びらの浮遊感を感じていただければ幸いです。
慶集寺 琳空館(りんくうかん)
絵像御本尊 + 日本画家・網谷真佐美 筆『 九字十字名号軸 』
慶集寺には、文亀二年(1502)本願寺九代・実如上人直筆の裏書が付された「絵像本尊」が代々に渡って受け継がれており、本願寺中興の祖・蓮如上人との交流を伝える伝説的逸話も伝えられています。 裏書の記載によると、この絵像本尊の下付された場所は「加州石川郡北嶋保鹿嶋村」となっており、これは現在の「石川県白山市鹿島町」の地域を示しています。
手取川の河口付近に位置するその一帯は、蓮如上人の室町時代から、実如・証如・顕如上人の三代にわたる戦国時代へと続く「真宗門徒共和国・加賀」の重要地域であることから、一向一揆の失われた歴史が推測されます。
この御絵像を新たに額装化して保存することに併せて、九字十字名号の脇掛軸の制作を、岩瀬港町在住の日本画家・網谷真佐美氏に依頼しました。琳空館の内陣にしつらえられた参拝空間は、時代を超越する趣を感じさせ、訪れる人々は自然と掌を合わせていらっしゃいます。
◉ 網谷氏にお尋ねしました
Q1:仏教(南無阿弥陀仏)をテーマとした作品の依頼に、まずはどう思われましたか?
未熟な私に果たして描けるのだろうかという巨大な不安と、こんな自分だからこそできることがありそうなワクワク感が交錯し、今生きているこの時代に、このタイミングで巡り合えた幸運を有り難く思いました。
Q2:作品制作の過程で、どんなことを思い、感じられましたか?
何もないところから幾度も繰り返したご住職との対話により、人と人とが出会い、想いが言葉になり、そしてつながり、やがて骨格を持ち、形をつくり彩られていく様は、命が生まれ育っていくような感覚でした。
Q3:慶集寺を訪れる方々に、作品のどんなところを見てもらいたいですか?
いろいろな色をもちながらひとつのような、変わらずにあるようで動いているような、一瞬のようで永遠のような、そんな単なる文字と蓮が、ただいつも確かに此処にあるだけだと思っていただければ。