⑤01. ひかりといのちの共鳴音
さまざまな宗教が、それぞれの言葉で「真実」を説こうとします。けれども真実とは、そもそも言葉にできないものではないでしょうか?「わかりやすく真実を説いてくれ」と言われたとしても、それをわかりやすい言葉で説いたとしたら「真実がそんなにわかりやすいはずがない」と、きっと言われることでしょう。
真実はただ一つだとしても、それを伝えるための表現はさまざまにあるのだと思います。それを言い表す言葉は、言い表せないほどに多様にあるのだと思います。
誰かが指で何かをさし示したとき、あなたはその指自体を見るのではなく、指がさし示している方向にあるものを見ます。月を指し示す指があったとしたら、あなたはその月を見るものであって、その指を見ていても仕方ありません。夜空に見える月は一つでも、それを指し示す指はいくつもあるのです。
無数にある宗教の中の一つとして、浄土真宗があります。浄土真宗の経典には、西の彼方に「極楽浄土」という国があって、その国には「阿弥陀如来」という仏がいると記されています。
この記載は、仏教でいうところの「方便」です。方便とは、手立てとか手段という意味の仏教用語です。
目にも見えず言葉にもならないことを、私たちにも受け取りやすい表象にして伝えようとするのが、方便です。方便とは、目にも見えず言葉にもならない真実を、私たちに知らせようとして現れるものなのです。
浄土真宗とは「南無阿弥陀仏」という真言(真実の言葉)を、自らの声にして称えることによって成立する信仰です。もう少し言葉を加えるなら、「南無阿弥陀仏」という真言を自ら称えて、その声を自らの耳で聞くことによって成立する信仰です。
南無阿弥陀仏の前部分の「南無」という言葉は、「帰依する、おまかせする」という意味です。後部分の「阿弥陀仏」という言葉は、仏の名前です。その名前には「永遠の光と命に目覚めたるもの」という意味があります。
南無阿弥陀仏の六文字で、
阿弥陀仏におまかせします
心から阿弥陀仏という名の仏を信じます
永遠の光と命に目覚めたる尊者とともに
という意味になります。
この真言は『大無量寿経』という聖典に記されている神話的な物語に由来するもので、その聖典には、主人公である出家者が、48ある誓願をすべて成し遂げることによって、「阿弥陀仏」という名前の仏と成る物語が記されています。
私たちは、それらの誓願の中にある特別な誓願に留意する必要があります。
18番目に誓われたその願いはこのような心が宣べられています。
私の名前を称えてください
私はそれを願っています
あなたが私の願いに気づくその時まで
私はそれを誓い続けます
これが48の中で最も大事な誓願です。これを「本願」といいます。
浄土真宗では、この誓願が私に向けられていることを信じて、その心に素直に順うことが肝要とされます。自分自身が何かを願うのではなく、その願いが自分に向けられていることに、意識を集中するのです。
仏の心は「namamdhabud」という音になって、私には聞こえてきます。
その音は、願いの心そのものが、私たちの一人一人に向けて、真実の気付きを与えようとするものです。
その音に意識を集中してみましょう。
namamdhabud
夜空に輝く月を示す1本の指があります。その指は月明かりに照らされています。
けれどもまた、夜空の月も自ら光を放っているわけではなく、太陽の光に照らされて、明るく輝いていることを私たちは知っています。
そしてまた、太陽だけが光を放っているわけではなく、宇宙には無数の恒星が光り輝いていることも私たちは知っています。
宇宙には無数の恒星が集まって構成されている、銀河が光り輝いていると言われています。
その銀河も無数にあると天文学者は言っています。
光が届いていないところはないと、仏教教典には記されています。
宇宙は光に満ち溢れているのです。
宇宙にあまねく満ちている光に包まれるようにして、一本の私の指がここに照らされています。
namamdhabud
永遠の光と命が namamdhabud という音になって、その心のあることを私たちに伝えようとしています。
心からの願いがあります。
一人きりではありません。
真っ暗闇ではないのです。
いつでもどこでもだれもが、永遠の光に照らされています。
いつでもどこでもだれもが、永遠の命に生かされています。
namamdhabud
namamdhabud
namamdhabud
namamdhabud という音を介して
私たちは心を通わすことができます
時空を超えて 心を通じ合わすことができます
namamdhabud
という音になって聞こえてくる
その心と一つになります
namamdhabud
namamdhabud
namamdhabud
そうすることで namamdhabud という音が、
仏の体現として現れてきます。
そう私は信じています。
namamdhabud
① 日本のスピリチュアリティ
01. 日本人の仏教観
02. ありがとう おかげさま
03. 仏と一つに成る
04. 彼岸からの光
② 仏の教えと大乗思想
③ 聖徳太子の仏法
01. 日本のお釈迦さま
02. 信と礼と和の理想
03. 世間虚仮 唯仏是真
④ 親鸞聖人が伝える信心
01. 仏法僧の3つの宝
02. 信と真と心のプラサーダ
03. 俗にそまらず 悟りすまさず
⑤ 南無阿弥陀仏を聞く
01. ひかりといのちの共鳴音