写真:本多 元
①01.日本人の仏教観
「あなたの宗教は何ですか?」と問われて「仏教」と答える日本人は66パーセントという統計があります。けれどもその一方で、「あなたは何か宗教を信じていますか?」という質問に対して「信じていない」と答えた日本人は、71パーセントという統計もあります。
これまでの日本では家制度が社会基盤としてあったので、自分の家で慣習として受け継がれてきた仏教を、自分自身の宗教として受け入れている人が多いということなのかもしれません。
確かに家の単位で執り行われる葬儀や、家の単位で管理されるお墓のお参りは、多くの日本人にとって仏教式であることが一般的です。けれども、仏教に説かれる教えを主体的に学びそれを実践しようとする人となると、そう多くないことも事実でしょう。自らの信仰として深く意識されることもないままに、慣習として形式上受け継がれてきたのが日本の仏教なのかもしれません。
もともとインドで約2500年前にゴータマ・ブッダによって説かれた仏教は、哲学的ともいえる論理体系に基づくものでした。それはまた、個人が主体的な意志をもって実践することで、自分自身を精神的に変革していくためのものでした。しかしながら、それが中国大陸を渡ってきた過程で、元々の仏教に様々な文化的要素が重なるように混じり合って伝わってきました。そうした様々な影響によって、古代期に伝来した日本の仏教は、既に元々の仏教とは大きく形を変えたものになっていました。
日本への伝来以降にも、土着的な信仰や習慣が混じり合ったり、各時代の為政者によって社会制度として利用されたりして、それは変化していきました。そのような歴史的な背景の上に形作られてきたのが、この島国に伝わる仏教なのです。
日本人にとっての仏教は、イスラム教やユダヤ教などに見られるような、敬虔で一途な信仰のあり方とは趣の異なるものだと思います。日本人の信仰には、個人の明確な信念や意志が、必ずしもあるわけではないのかもしれません。多くの日本人にとっての仏教とは、ただなんとなくあるものでしかないのかもしれません。
かといって、日本人に信仰心や精神性がないわけではありません。日本人には、太古の昔から脈々と受け継がれている自然崇拝的な神道があります。そしてまた、日本人特有の感性で発展させてきた、仏教の様々な宗派があります。それは多様性に富んだ、柔軟性のある、エコロジカルな精神性を持つ宗教観だと私は思っています。
① 日本のスピリチュアリティ
01. 日本人の仏教観
② 仏の教えと大乗思想
③ 聖徳太子の仏法
01. 日本のお釈迦さま
02. 信と礼と和の理想
03. 世間虚仮 唯仏是真
④ 親鸞聖人が伝える信心
01. 仏法僧の3つの宝
02. 信と真と心のプラサーダ
03. 俗にそまらず 悟りすまさず
⑤ 南無阿弥陀仏を聞く