石黒健治先生との出会いは1990年。富山の実家を離れて、東京で夜間学生をしていた頃でした。当時、日吉にある写真専門学校で学んでいた友人を介してご縁をいただいて、どうした経緯だったのか、先生と友人と私は、ニューヨーク経由ジャマイカの旅を共にすることとなりました。
生まれ育った寺を出て、坊主以外の何者かにならなければいけないと、青い惑いに悶え踠いていた二十一歳の私に、世界各国を旅して写真を撮られていた石黒先生は、自然な微笑みで、平然と語りかけてくださいました。
「君はインドを旅するといい。そして、坊主になるのがいい。」
そして私はその一年後、師の言葉に導かれるようにして、インドへ。そして今、寺の住職に。
現在はプロカメラマンとして活躍されている旧友の本多元氏には、慶集寺三百周年記念事業の記録を、昨年より撮影していただいています。そしてまた石黒健治先生には、慶集寺のある町・東岩瀬を被写体とした写真集の制作に、取り組んでいただいています。
不思議なご縁をいただきました。私たちの旅は、まだまだ続いているようです。
(写真撮影・本多元)