② 次世代へとつなぐために

これまでにはあまり深く考えられることもなく、家の承継とともに引き継がれてきたのが、寺院と門徒の関係でした。しかしながら今一度、現代における「門徒」とはどのようなものなのか、あらためて認識し直す必要がありそうです。

浄土真宗本願寺派の最高規則としてある「宗法」によると、門徒とは、特定の寺院に備付の「門徒名簿」に登録されている人をいうと示されています。名簿への記載には、法人と個人の間での、相互の意思確認が当然必要です。

また同じく宗法には、本願寺門主より生前法名をいただく儀式である「帰敬式(おかみそり)」を受けることによって、本願寺派の門徒になることができるとも記されています。自らの主体的な信仰心があってはじめて、門徒になるということです。

これによってわかることは、あくまでも「門徒」とは、宗派寺院への帰属や信仰の自覚に基づく「個人」を示すものであって、家の単位で義務的に固定化されているものではないということです。

そもそも日本国憲法には「信教の自由」が明記されているように、家の宗教や宗派、檀家・門徒についての法的な規定があるわけではなく、特定の宗教を信仰することも、しないことも、現代の日本では個人の自由です。

現実に一つの家の中でも、家族の一人一人が異なる宗教宗派を信仰している場合もあるでしょう。現状に鑑みるなら、家の宗教がそのまま「私の宗教」とは言い切れません。

親の代までは熱心な浄土真宗本願寺派の門徒であったとしても、その子供の代になると、自分の家のお寺の名前や宗派を知らないということもあるでしょう。

家の宗教が自然と次世代に受け継がれていくという環境は、親と子と孫の三世代が、同じ家庭で共に生活をしているなかであったことです。

現代においては、単身世帯・夫婦世帯・核家族世帯・三世代世帯と、世帯としての在り方も多様であるように、家族の在り方を一括りにしていうことはできません。

一つの「家」という認識はあっても、現実には複数の「世帯」に分かれて暮らしているというケースは、決してめずらしくありません。

平成30年の国勢調査に基づく推計によると、2040年には日本の約4割が一人暮らしの世帯になるという予測もなされているようです。

葬儀や法要やお墓参りといった仏事を機会として、人と人とが、人と寺とが、確かなご縁でしっかりとつながりつづけていくことは大切です。

これからどんな時代になっても、一人ひとりが幸せを感じながら生きて、安心して最期を迎えることができるように。

確かなご縁でつながる新しい寺院の在り方を、いまここから創り出していかなければいけないと感じています。